script async src="https://pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js?client=ca-pub-3977870893130470" crossorigin="anonymous" 仮想水⁉意外と知らない水不足の問題について | 環境問題学習ノート ごみについて考えよう

仮想水⁉意外と知らない水不足の問題について

環境問題

水資源が豊富で水処理技術の高い日本に住んでいると、水不足の問題は実感しにくいかもしれません。しかし、日本も水不足の問題は無関係ではありません。水不足の問題を考えるには、直接的な水の使用だけではなく、「仮想水(バーチャルウォーター)」という概念を知ることで、問題の本質に近づけます。身近な問題として、ぜひ一緒に考えてみませんか?

世界の水資源の現状

地球にはたくさんの水がありますが、大部分は塩水(海水)であり、淡水はわずか2.5%程に過ぎません。さらに南極や北極の氷、地下水を除いた、河川や湖などの人が活用しやすい状態の淡水の量は0.01%程度しかありません。日本は水資源が豊富な国なので実感が湧きにくいかもしれませんが、世界では10人に3人が安全に管理された水が使えずにいます。水資源は国や地域ごとに大きな偏在があります。カナダ、アメリカ、ブラジルのように非常に水資源に恵まれた国々もあれば、中東諸国や北アフリカの国々のように非常に水資源が貧しい地域が存在します。


出典:国土交通省「世界の水資源」

※参考資料
国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン
国土交通省:世界の水資源
世界辞典:1人あたりの水資源量ランキング

国や地域ごとの水不足の原因

水不足の問題は国や地域ごとに異なります。

南アジア
南アジアにはガンジス川やインダス川のような大河川が流れており、主要な水資源は河川水と地下水です。雨季と乾季があるため雨季には河川水から水資源が得られ一方で、乾季になると河川水からは水資源が得られず地下水に大きく依存します。南アジアは農業が盛んで、水資源の約80%が使用されています。地下水は季節的な影響を受けにくい安定した供給減ですが、過剰利用により地下水位の低下が問題になっています。地下水位が低下することでヒ素濃度の高い層から水を汲み上げることになり水質の問題が発生しています。
人口増加や都市化によって生活排水や工業廃水の適切処理が追い付かず、河川の水質汚染も問題になっています。
また、都市部の農村部における経済格差が大きく、農村部では安全な水を十分に得られない地域もあります。

※参考資料
東京財団政策研究所:途上国の水問題:南アジアの地下水ヒ素汚染

北アフリカ 
北アフリカは乾燥地帯に位置し、地下水や限られた降水量に依存しています。この地域では水資源の約80%が農業用水として使われていますが、技術が未発達なので非効率な水の使用がされています。加えて農薬の使用により水質汚染が起こり、更に水資源が減少しています。また、人口増加により水需要が増えていることも水不足の原因です。
エジプトでは地下水や降水量ではなく、ナイル川に水資源を大きく依存しています。しかし、ナイル川の下流に位置するため、上流国であるエチオピアやスーダンのダム建設などの影響を受けやすく、水の配分を巡って問題が起きています。

※参考資料
J-STAGE:中東レビュー

サハラ以南のアフリカ諸国 
この地域では多様な気候帯があり、降水量の少ない地域ばかりではありません。しかし、多くの人々が安全な飲み水を確保できていません。途上国が多く、排水システムや貯水施設などのインフラ整備がされていないことが水不足の主な原因です。また、インフラ整備がされていないため、気候変動による降水パターンの変化にも適応できない状況が続いています。

※参考資料
カンキョーダイナリー:アフリカが直面する「水と衛生問題」現状と解決への取り組みとは

中東諸国
多くが砂漠地帯であり、降水量が極めて少ないです。その為主な水源は次の3つに分類されます。
・河川(チグリス川、ユーフラテス川、ヨルダン川)
・地下水
・海水淡水化(湾岸諸国 例:サウジアラビア、UAE、イスラエル)
河川に水源を大きく依存している国では、水の配分が公平でないことが問題です。例えば、トルコ、シリア、イラクではチグリス川とユーフラテス川を共有していますが、河川上流に位置するトルコがダムを建設することで、下流に位置するシリアやイラクへの水の配分が減少しています。
湾岸諸国では、海水淡水化に水源を大きく依存していますが、海水淡水化はエネルギー消費量が多く環境負荷の面で課題があります。
また、人口の増加や都市化による水需要が追い付かないことも水不足の原因です。

※参考資料
J-STAGE:中東レビュー

中央アジア
中央アジアのアラル海は、かつて世界第4位の大きさを誇る湖でした。しかし、無計画な農業用水の使用によって、過去数十年でその大部分が失われました。特にソ連時代に行われた綿花栽培が原因で、アルダリア川やシルダリア川からの流入が大幅に減少しました。因みに中央アジア諸国は1991年頃にソ連から独立した国々です。
中央アジアの国々はアルダリア川とシルダリア川の水を分け合って水資源を得ていますが、ミスマッチが生じており水不足の問題が起きています。タジキスタンとキルギスはアルダリア川とシルダリア川のそれぞれ上流に位置する国であり、豊富な水資源を活かし水力発電が主要なエネルギー源となっています。一方で下流に位置するウズベキスタン、トルクメニスタン、カザフスタンは、綿花栽培に大量の農業用水を必要としていますが、上流国の水利用に影響を受けています。特にウズベキスタンやカザフスタンは人口増加や経済の発展に伴い水需要が増加しています。
中央アジアでは綿花栽培が盛んであり、多くの水資源を農業用水として使用されていますが、古いインフラや非効率な管理により水資源の損失が大きいことも水不足の原因です。

※参考資料
INPS Japan:中央アジアの水資源問題と解決策

仮想水を考慮した日本の水資源の現状

仮想水(バーチャルウォーター)とは、商品やサービスの生産過程で使用された水の量を指す概念で、ロンドン大学のアンソニー・アラン教授によって提唱されました。 これは、食料や製品を輸入する際、その生産に必要だった水を間接的に輸入しているとみなす考え方です。日本は水資源には恵まれているため、生活用水や国内産業に必要な水を賄える一方で、食料自給率はカロリーベースで約40%と低く、多くの食料や衣類を輸入しています。現に自分が着ている服もベトナム製やインドネシア製、バングラデシュ製のものが多いです。皆さんの着ている服もおそらく海外製のものが多いのではないでしょうか?

※参考資料
環境省:virtual water

日本の主な輸入品と仮想水の関係

世界平均でみると農業用水に約70%、工業用水に約20%、生活用水に約10%の水資源が使われています。農業分野に多くの水が使われています。工業分野では繊維・アパレル業界は水資源を多く使用する分野です。

穀物類
以下の穀物類のほとんどはアメリカ、カナダ、オーストラリア、ブラジルからの輸入に依存しています。

  • とうもろこし: とうもろこし1kgの生産には約1,900リットルの水が必要とされます。主に飼料として使われます。
  • 小麦: 小麦1kgの生産には約2,000リットルの水が使用されます。
  • 大豆: 大豆1kgの生産には約2,500リットルの水が必要です。

畜産物
以下の畜産物のほとんどはアメリカ、カナダ、オーストラリア、ブラジル、タイから輸入されています。市場に出回っている約半分のお肉が輸入品です。

  • 牛肉: 牛肉1kgの生産には約20,000リットルの水が必要とされ、飼料の生産に多くの水資源が使われています。
  • 豚肉: 豚肉1kgの生産には約6,000リットルの水が必要です。
  • 鶏肉: 鶏肉1kgの生産には約4,500リットルの水が使用されます。

衣類
約95%を輸入に依存しており、半分近くを中国から輸入しています。中国の他にはベトナム、インドネシア、バングラデシュなどの国からも輸入しています。

  • 綿製品: Tシャツ1枚の生産には約2,700リットルの水が必要とされています。

※参考資料
環境省:バーチャルウォーター一覧表
RICOH HP:1枚のTシャツから考える、世界の水問題
農林水産省:数字で学ぶ「日本の食料」
農林水産物輸出入概況 2023年
日本繊維輸入組合:繊維製品・主要国別輸入の推移
環境リサイクル学習ホームページ:日本の衣類の生産、消費

まとめ~私たちにできること~

日本では蛇口をひねればいつでも安全な水が出てきます。直接的な水に困ることはほとんどありません。しかし、仮想水を考慮し間接的な水資源でみれば、多くを海外に依存していることがわかります。
日常生活における節水はもちろん大切ですが、世界の水不足の問題を考えるとあまり効果はないかもしれません。勘違いしてほしくないですが、節水が無駄だと言いたいわけではありません。それよりも、私たちの消費行動が大きな影響を与えます。
世界の水不足の問題という視点では私たちの消費行動が重要になってきます。食料自給率の問題は別として、水資源の豊富な国から輸入することは悪いとは思いません。しかし、バングラデシュなどの水不足の問題が起きている国から多くの衣類を輸入している現状は一考する余地があると思います。
また、日本は他の国と海を隔てている孤島なのであまり意識することはありませんが、多くの国は陸続きであり、どこかの国の水の使用が過剰になれば他の国にシワ寄せが行きます。世界全体で水資源を分け合っているという意識を持つことが大切だと思います。
水不足に苦しむ国や地域では、気候変動による洪水や干ばつの影響も先進国以上に受けています。水不足の問題に気候変動の問題は切り離せません。気候変動に関してはこちらをご覧ください。
私たちが消費行動を意識することで少しずつですが、世の中は良くなると思います。買い物をするときにちょっとでもこのブログを思い出してもらえると嬉しいです。

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