紙のリサイクルには、インクの除去や漂白といった化学処理が必要になります。一方で、日本は森林資源が豊富な国です。林業の活性化という観点から考えると、「紙のリサイクルを行うより、木材から紙を作る方が環境に優しいのではないか?」と疑問を抱き、調べてみることにしました。
古紙の種類とリサイクルされる紙製品
牛乳パックをリサイクルしてトイレットペーパーが作られていることはよく知られていますが、他の古紙がどのようにリサイクルされているかを知らない方もいるのではないでしょうか?
古紙の種類とリサイクル製品
- 新聞 → 新聞用紙、コピー用紙
- 段ボール → 段ボール
- 雑誌 → 菓子箱、書籍、段ボール
- 雑紙 → 段ボール
- 飲料用紙パック → トイレットペーパー、ティッシュペーパー
リサイクルできない紙(禁忌品)
汚れや臭いが強いものや、合成材が混ざった紙製品はリサイクルできません。禁忌品が混入すると、製造過程で機械トラブルや不良品が発生する原因となります。
禁忌品の例
- 食べ物が付着している紙(例:ピザやケーキの容器)
- レシート(感熱紙)
- 紙コップ(防水加工)
生産される紙製品の割合と古紙のリサイクル率
生産される紙製品のうち、段ボールやコピー用紙、書籍が大きな割合を占めています。また、紙の原料としては、約70%が古紙、約30%が木材パルプです。古紙の回収率は約80%、利用率は約60%と、古紙のリサイクル率は世界的にも高い水準です。 しかし、日本の木材の約70%は輸入されています。日本に豊富な森林資源がありながら、それが十分に活用されていないのはもったいないと感じます。
参照(小学生のための環境リサイクル学習ホームページ)
古紙のリサイクル工程
- パルプ化:古紙を水と混ぜ、細かく解かれてパルプ状にします。これにより紙の繊維(セルロース)が再利用可能になります。
- インク除去:コピー用紙や新聞紙に付着したインクを、化学薬品や気泡を使って除去する「脱墨処理」を行います。
- 漂白:必要に応じて、酸素系や塩素系の漂白剤を使い、紙を白くします(段ボールなどでは省略されることもあります)。
- 抄紙(しょうし):洗浄されたパルプを薄く伸ばして乾燥させ、シート状に成形します。
※パルプ:製紙に用いるための繊維。
木材(バージンパルプ)から紙を作る工程
- 伐採:製紙用の木材(スギ、ヒノキ、ユーカリなど)を伐採します。
- 木材のチップ化:木材を細かく切り、チップ化します。
- 化学処理でパルプ化:木材チップを薬品とともに煮込み、パルプにします。副産物の蒸解廃液は燃料として利用されます。
- 漂白:酸素系または塩素系の漂白剤を使い、パルプを漂白します。
- 抄紙(しょうし):
- リサイクル紙と同様に、パルプをシート状に成形し、紙を完成させます。
古紙リサイクルとバージンパルの比較
リサイクル紙とバージンパルプから作られた紙では、抄紙までの工程が異なります。リサイクルは省エネな印象がありますが、日本製紙が2007年に発表したデータによると、古紙100%で再生紙を作る場合、バージンパルプを使用する場合に比べてCO2排出量が多いことが示されています。 バージンパルプの製造過程では、蒸解廃液を燃料として使うため、化石燃料の使用量が減少します。一方、古紙リサイクルでは、インク除去や漂白に多くのエネルギーと化学薬品が必要です。そのため、白くて綺麗な紙を作る場合、リサイクルは必ずしも環境に優しいとは言えません。しかし、段ボールや新聞用紙のように品質を求めない製品には適しています。
参照(再生紙ラインナップを再編、古紙100%配合製品を廃止)
林業と製紙業
日本には、豊富な森林資源があるにも関わらず、日本の木材はあまり使われていない現状があります。日本は傾斜が多く作業コストがかかるため、値段の安い海外の木材が多く使われます。 製紙業で使われる木材は間伐材や建築資材に向かない木材です。このため、森林破壊にはつながりません。むしろ、間伐を行わずに森を放置すると、荒廃してしまいます。林業を活性化させることで、森の管理が適切に行われ、災害リスクの低減やCO2の吸収量維持につながります。
まとめ
紙のリサイクルは、コピー用紙などの白く綺麗な紙を作るには向いていませんが、段ボールなどには効果的です。リサイクルを進めることはごみ削減に役立ちますが、木材を適切に使用することも林業の維持に繋がり、環境保護に役立ちます。リサイクルと木材利用のバランスを考えることが重要です。
参考文献
もっと詳しく知りたい方へ、参考になるサイトを紹介します。
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