原発事故と処理水の海洋放出について

社会問題

今回の記事では、福島第一原発事故を振り返り、原発の安全面を考えるとともに、処理水の海洋放出の現状について取り上げます。

原発の基本的な仕組み

図:原発の仕組み

原発は核分裂反応を利用して発電します。主な流れは以下の通りです。

  1. 核分裂反応
    ウランやプルトニウムの原子核に中性子が衝突することで核分裂が起こり、燃料棒から大量の熱エネルギーが発生します。
  2. 熱の利用
    発生した熱で水を加熱し、高温高圧の蒸気を作ります。
  3. タービンの回転
    蒸気の力でタービンを回転させます。
  4. 発電機での電力生成
    回転したタービンが発電機を駆動し、電力を生成します。
  5. 冷却と蒸気の再利用
    蒸気を冷却して再び水に戻し、再循環させます。

核燃料は膨大なエネルギーを持つ一方で、適切に管理しなければ非常に危険なため、制御棒や冷却システムは非常に重要になります。

福島第一原発事故の原因

福島第一原発事故が起きた原因を簡単に説明すると以下の通りです。

  1. 巨大地震と津波
    2011年3月11日に発生したマグニチュード9.0の地震により、高さ15m以上の津波が襲来しました。設計時に想定されていた津波の高さを大幅に超えていました。この津波で非常用電源が水没しました。
  2. 電源喪失
    津波により原発内の電源が喪失しました。電源がないので核燃料を冷やすためのポンプや冷却システムが動かなくなりました。その結果、燃料が過熱し始めます。
  3. 炉心溶融(メルトダウン)
    冷却できない状態が続いたことで、原子炉の中の燃料が溶ける「炉心融解(メルトダウン)」が発生しました。燃料が非常に高温になり、水が蒸発して水素ガスが発生しました。この水素が建屋内で爆発し、大量の放射性物質が外部に漏れ出しました。

自然災害と管理の甘さや対策の不十分などの人為的なミスが重なった事故だったと言えます。

事故後の処理と汚染物質

  1. 燃料デブリ
    原子炉建屋内には、燃料棒が溶け落ちて固まった「燃料デブリ」が存在します。燃料デブリは安定した状態を保つために、水をかけて冷却が続けられています。
    燃料デブリは放射線量が非常に高く、人が近づくことができないため、取り出しには長い時間がかかる見込みです。
  2. 汚染水
    燃料デブリにふれた水は、高い濃度の放射線物質を含んだ「汚染水」となります。この汚染水が雨水や地下水などと混ざり、日々新たな汚染水が発生しています。
  3. ALPS処理水
    多核種処理設備(ALPS)等を使い、汚染水に含まれるトリチウム以外の放射性物質を除去し、安全基準を満たすまで浄化処理をした水を「ALPS処理水」と言います。

出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書 2024」

なぜALPS処理水の海洋放出を行うのか?

出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書 2024」

廃炉作業を本格的に進めるために、新しい施設が必要になりますが、ALPS処理水を貯蔵しているタンクの数が増え続けており、新しい施設を建設する敷地が確保できないという問題から、海洋放出が行われています。

処理水の海洋放出に当たっては、トリチウム以外の放射性物質について、安全基準を確実に満たすレベルまで浄化されていることを確認し、取り除くことが困難なトリチウムの濃度についても、安全基準を十分に満たす濃度まで海水で大幅に希釈されています。

出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書 2024」

トリチウムとは何か?

「そもそもトリチウムとは何なのか?」「除去できなくて大丈夫?」など、疑問や不安に感じる人もいると思います。ここでは、トリチウムについて簡単に説明します。

出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書 2024」

トリチウムは水素の同位体であり、通常の水素と同様に酸素と結合し水となります。トリチウムは自然界に広く存在しています。

また、トリチウムの放射線のエネルギーは非常に弱く、紙1枚で遮ることができるため外部被ばくの可能性は低いです。さらに、体内に取り込んでも10日程で半分が水と一緒に外に排出されるため、内部被ばくの影響も小さいと言われています。

また、ALPS処理水の海洋放出による人体への放射線の影響は、日常生活で受けている自然放射線からの影響と比較しても、非常に小さい(約100万分の1から7万分の1)と確認にされています。

海洋放出をしているのは日本だけではない

出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書 2024」

処理水の海洋放出を行っているのは、日本だけではありません。トリチウムは海外の原子力関連施設からも安全基準を守った上で放出されています。また、トリチウムの放出による影響は見つかっていません。

まとめ

  1. 福島第一発事故で生じた燃料デブリの取り出し作業は、困難な作業であり長い時間がかかる。
  2. 燃料デブリを冷却するためにかけ続けられている水は汚染水となり、汚染水を処理したALPS処理水が増えている。
  3. ALPS処理水を貯蔵しているタンクにより、敷地がひっ迫しており廃炉作業を進めるために必要な施設を建設することができない。
  4. ALPS処理水の海洋放出による影響は定期的にモニタリングが行われ、安全が確認されている。

私見ですが、ALPS処理水の海洋放出は楽観視できる問題ではないが、過度に恐れる必要もないと思いました。
皆さんは、この問題についてどのように思いましたか?

参考資料

この記事は全面的に資源エネルギー庁「エネルギー白書 2024」を参考にしております。

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